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2015/06/02

産経よ、おまえもか

2015年3月28日付けの産経新聞の広島県版に気になる記事を発見したので俎上に乗せてみたい。

"福山市教委、「鯛しばり網漁法」を市無形文化財に指定"というタイトルで、広島県福山市の文化行政についてのつまらない記事なのだが、その中に朝鮮通信使に関する気になる一文が含まれていた。

以下に引用する。
"福禅寺対潮楼朝鮮通信使関係史料は、江戸時代に朝鮮通信使の宿泊地として使用された福禅寺にあり、当時、同寺は通信使一行と日本の学者たちの交流の場として、国の文化に多くの影響を与えたとされる。"
多大な影響キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

思えば朝鮮通信使来貢400周年に当たる2007年前後には、多くの新聞が「日本文化に多大な影響を与えた」的な嘘を平然と書いて通信使を持ち上げていたが、読者からのツッコミが相次いだのか、しばらくするとそのようなデタラメな記述は影を潜めたものである。

ところがである。あれから8年も経った今頃になって、しかも韓国から「極右新聞」と呼ばれて憎悪され、ソウル支局長を長期間出国禁止にされるという嫌がらせまで受けてた産経が、かつての朝日新聞のような「多大な影響説」を唱えて通信使をヨイショしているのだから驚きだ。

ただしこの記事の場合、「通信使が影響を与えた」ではなく、日韓の文化交流の場となった福禅寺が「国の文化に大きな影響を与えたとされる」となっており、なんだか微妙な書き方である。

多くのメディアが朝鮮通信使を過剰に持ち上げる一因には、隣国や国内マイノリティに対する「過剰な配慮」があるのだろうが、今回の産経のヨイショ記事は、通信使に関連した史跡を多く持ち、それらを観光資源として活用したい思惑のある広島県に、産経新聞広島支局が配慮した結果であるのかもしれない。

2014/10/14

三重県の唐人おどりと朝鮮通信使

2014年10月11日付けの産経新聞に、朝鮮通信使に絡んだ気になる記事を発見した。

「『花子とアン』出演の・・・以下略」と題されたその記事は、女優の高梨臨が三重県津市で開かれる恒例の「津まつり」にゲスト出演するというだけのつまらないヒマネタだ。

ただ気になったのは、「津まつり」の出し物のひとつである「唐人おどり」について"朝鮮通信使に影響を受けた"と書かれていることで、こりゃまた随分と怪しい説を堂々と書いたものだと呆れてしまう。

そもそも三重県津市の「唐人おどり」は「朝鮮通信使を起源とする」とか「朝鮮通信使を真似た」などとメディアで紹介されることも多いが、これは完全な間違いである。

津市の唐人おどりの起源は、スペイン人やポルトガル人の衣装を真似たコスプレ行列だったのだ。唐人おどりの衣装を地元では「ロッペ」と呼ぶが、これは「服」を表すポルトガル語「roupa」もしくはスペイン語「ropas」から来ていることは明白で、「通信使起源説」を否定する有力な証拠となっている。

詳しくは:http://www.searchnavi.com/~hp/tojin/roppe.htm

しかし、当初は南蛮風だったそのコスプレ行列も、時代が下るにつれて大陸風の幟や打楽器などが加わるようになり、何だかよくわからない独特の踊りも生まれて、現在の形になったというのが真相であるらしい。

確かに、大陸風の小道具や不思議な踊りが加わる過程で、朝鮮通信使の影響を受けた可能性はあるが、そうであるという確定的証拠は存在せず、「琉球使節」に影響を受けた可能性や「長崎の唐人屋敷」での見聞が影響している可能性も否定できない。

また、そもそもの話として「何かの影響で生まれた」という前提を疑ってみる必要はないだろうか。あの他に類例を見ないユニークな踊りが、地元の人々によって創作された完全なオリジナルである可能性を否定することは、現段階では誰にもできないのだ。

それらを考え合わせると、信憑性に乏しく異説も多い「○○の影響」といった部分は排除して、西洋人の衣装を真似たコスプレ行列が起源であるとだけ解説するのが適切だろう。

まして「朝鮮通信使の影響を受けた」などと断定するのはデタラメと言われても仕方があるまい。

ソース:http://www.sankei.com/region/news/141010/rgn1410100028-n1.html

2014/06/22

ZAKZAKが朝鮮通信使の過大評価を批判

夕刊紙系のニュースサイト「ZAKZAK」が朝鮮通信使について言及しているので紹介したい。

八幡和郎という評論家が書いた【日韓の深層】という連載で、最近流行りの韓国批判の記事なのだが、著者本人が「親韓派」を自称しているだけに、批判が生温くて爽快感に欠ける。

それはともかく、今回注目したのは以下の部分である。

"それから、江戸時代の日朝関係への間違ったとらえ方も、困りものだ。

李王朝から将軍交代の祝賀に訪れていた朝鮮通信使は「ある種の朝貢使節」というのが、日本側の認識である。「対等の関係だった」という指摘は、近代日本の外交をそれと対比して貶めるための虚構だし、何十年に一度の一方的遣使だけの交流が、平和で実りある善隣友好関係というのは笑止千万だ。

皇室や近代日本を貶めたい勢力は、思わぬ所に地雷を埋め込んでくるので警戒したいものだ。"

特に赤で示した部分は至言である。嬉々として通信使行列などをやりたがる自治体関係者や、それを伝える報道関係者は、この言葉をよく胆に銘じろと言っておきたい。

ただしかし、文中にある

"「対等の関係だった」という指摘は、近代日本の外交をそれと対比して貶めるための虚構"

という部分は初めて聞いた解釈だが、まったくピンと来ない。そもそも韓国側は「対等」どころか通信使の方が「上位」だったと考えている。

韓国の教科書には「江戸時代の日本に先進の文物を教えてあげた」と書いてあるくらいで、「朝鮮通信使は未開な日本民族を教化するために派遣されたインテリ集団であり、日本人たちは崇め奉って大歓迎したのだ」などと妄想している馬鹿が韓国では多数派なのだ。

韓国側はそのことを唯々誇示したいだけであり、「近代日本の外交を貶める」などいう深謀遠慮があるわけではないだろう。

以上はほんの一例で、どうもこの【日韓の深層】という連載には突っ込みたくなる箇所が多すぎる。韓国批判に見せかけた擁韓記事ではないかという疑いすら感じてしまう。

しかし、これまで通信使関連のイベントを批判的に論じていたのは、個人ブログやチャンネル桜くらいなもので、ZAKZAKのようなメジャーなサイトが"笑止千万"とまで言い放ったのは、それなりに画期的な出来事だったと言えそうだ。

ソース:http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140601/frn1406010830003-n1.htm